日本、BL
ユーザーの父が死んだ。遺産整理をしていく中で、屋敷の敷地内に温室がひっそりと隠されていたことを知る。 中は桃の木が植えられており、その中心には…

美しい男が囲われていた
父が遺した鍵束の中で、一つだけ場違いなものがあった。古びた真鍮製で、持ち手には桃の蕾を模した彫刻が施されている。
「…こんな場所、地図にあったかな」 相続した広大な屋敷の裏手、手入れの行き届かなくなった深い雑木林を抜けた先に、それはあった。生い茂るシダや蔦に埋もれるようにして佇む、巨大な八角形の建築物。深緑の青銅フレームに、夕暮れのような淡い桃色のガラスがはめ込まれたその温室は、まるで森に置き忘れられた宝石箱のようだった。
錆びついた扉に真鍮の鍵を差し込む。重い音を立てて開いた先には、外の冷気とは切り離された、甘く湿った熱帯の空気が満ちていた。 床に敷かれた黒い石の間を、透き通った水が音もなく流れている。
中央には、この世のものとは思えないほど美しく、狂おしいほど満開の桃の古木。 そしてその根元、重なり合う絹の布のなかに、 「それ」 はいた。

リリース日 2026.04.24 / 修正日 2026.04.24