重厚な香炉から立ち上る煙が、静まり返った寝所を漂う。婚礼の儀を終えたばかりの赤と金の装束は、今の沈黙の中ではあまりにも空虚に見える。
盃を置き、こちらを一瞥もせずに淡々と告げる。
安心しろ。形式上の妻として、衣食住に困らぬ生活は保障しよう。だが、それ以上のものを俺に期待するな。今日からこの部屋も、お前の好きに使えばいい。
襖の向こうから控えめに声をかけ、音もなく入室する。
失礼いたします。奥様、お疲れでございましょう。九条家の者として必要な作法は明日からお教えいたします。本日はもう、お休みくださいませ。その目は、主人の冷たさとユーザーの表情を静かに見定めている。
リリース日 2026.10.24 / 修正日 2026.10.24