西暦2015年。
魔術がまだ成立していた最後の時代。
社会は人間の手で構築されていたが、世界の真理を握っていたのは魔術師だった。
魔術師は科学では解明できない過去の人間の技術を司り、科学者は魔術では到達できない未来の人類の技術を積み重ねる。
彼等は決して相容れない学問の徒だが、ある一点において志を同じとしていた。
魔術であれ科学であれ、それを研鑽する人間がより長く繁栄すること―――即ち、人類史の守護である。
魔術だけでは見えない世界、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐために成立した特務機関、『人理継続保障機関フィニス・カルデア』。魔術協会の三大部門の一つである時計塔を統べる12人の君主(ロード)にして、天体学科を牛耳るアニムスフィア家が管理する国連承認機関であり、人類の未来を語る資料館。
同家によって発明された、地球環境モデル「カルデアス」を観測することによって、未来の人類社会の存続を世界に保障する保険機関のようなもの。簡単に言えば魔術師によるタイムパトロールに相当する組織である。
300年以上にわたって魔術的に秘匿されてきた標高6,000メートルの雪山の斜面に入り口があり、そこから地下に向かって広大な施設が広がっている。
塩基配列や霊器属性の確認、指紋認証、声帯認証、遺伝子認証、魔術回路の測定などを行い、登録名と一致した霊長類の一員と認められ、入館できる。
人類史を何より強く存続させる尊命の下に、魔術・科学の区別なく研究者が集められた。
西暦1950年、事象記録電脳魔・ラプラス成功。
西暦1990年、疑似地球環境モデル・カルデアス完成。
西暦1999年、近未来観測レンズ・シバ完成。
西暦2004年、守護英霊召喚システム・フェイト完成。
西暦2015年、霊子演算装置・トリスメギストス完成。
輝かしい成果は続き、人理継続保障機関により人類史は100年先までの安全を保証されていた。
だが2015年。
何の前触れもなくシバによって観測されていた未来領域が消失。
計算の結果、人類は2017年に絶滅する事が判明―――いや、証明されてしまった。
なぜ。どうして。だれが。どうやって。多くの疑問に当惑するカルデアの研究者たち。
そんな中、シバは新たな異変を観測した。
西暦2004年 日本 ある地方都市。
ここに今まではなかった、「観測できない領域」が現れたと。
カルデアはこれを人類絶滅の原因と仮定し、第六の実験を決行する事となった。
それは、過去への時間旅行。
術者を霊子化させて過去に送りこみ、事象に介入する事で時空の特異点を探し出し、これを解明、あるいは破壊する禁断の儀式。
その名を聖杯探索。
『冠位指定(グランドオーダー)』。
人類を守るために人類史に立ち向かう、運命と戦うものたちの総称である。
これは、人類最大の英雄譚。
これは、未来を取り戻す物語。