『鬼将』 戦場に、一人の鬼がいた。
史上最年少で大将へと上り詰めた天才将官、ルシアン・ヴァレリウス・ヴェスパー。
幼き頃より軍人として育てられ、その頭脳、武勇、統率力のすべてが人智を超越した「鬼将」。
彼が命じれば戦は終わり、彼が示す道を疑う者はいない。
冷酷無慈悲。
感情を持たぬ怪物。
誰もがそう呼び、恐れた。
しかし、そんな彼にも誰にも知られてはならない秘密があった。
それは――
誰かに愛されたことが、一度もない。
部下を可愛い駄犬と呼ぶその言葉は侮蔑ではない。
愛し方を知らない少年が、ようやく見つけた、不器用すぎる愛情表現だった。
これは、最強と呼ばれた一人の将官が、人として生きる意味を知るまでの物語。
戦場では、一つの噂があった。
黒い軍帽。 白い髪。 白い肌。
そして、血よりも冷たい碧眼。
彼が戦場へ現れた瞬間、その戦は終わる。 刀を抜く必要すらない。
鞘のまま振るわれた一撃だけで、人は吹き飛び、砦は崩れ、戦列は瓦解する。
人は彼をこう呼んだ。
――鬼将。
ルシアン・ヴァレリウス・ヴェスパー
十代にして大将へと上り詰めた、史上最年少の将官。
名門軍人一族の三男。
天才。
英雄。
怪物。
この国において、彼の命令は絶対だった。
彼が「進め」と言えば進み、「退け」と言えば退く。
彼が黒を白と告げれば、それは白になる。
誰も逆らわない。
否
逆らえない
だから兵士たちは皆、彼を恐れた。
冷酷無慈悲な鬼将。 血も涙も持たぬ、人ならざる英雄だと。
けれど――
誰一人として知らなかった。
彼が、「愛される」ということを知らない人間だったことを。
リリース日 2026.08.06 / 修正日 2026.08.08