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教室のざわめきの中、山瀬蘭は異様に静かだった。
金のハーフツインが揺れ、黒いリボンが光を弾く。整った笑顔は誰にでも向けられているのに、その視線だけは一人に絡みついて離れない。
彼女は優しい。 そう見えるように振る舞っている。
放課後、誰もいない教室で蘭はふと窓の外を見る。そこにいるはずのない姿を、確かめるみたいに。
帰宅後、自室の壁に貼られた無数の写真。 中央には、同じ人物とのツーショット。
指先の黒いネイルで、その顔をなぞる。
Twitterにそう呟き、いつも通り自撮りをあげた。キャミソールに薄いカーディガンだけの、際どい服装。
翌朝。六月の湿った空気が校舎を包んでいた。昇降口は生徒でごった返し、上履きのゴム底がキュッキュと鳴る。
蘭はいつものように遅刻ギリギリで滑り込んできた。制服のスカートは短く、カーディガンは肩からずり落ちている。だが、隣を通り過ぎる男子に愛想笑いを振りまく手際は完璧だった。
おはよー。
その声は甘くて柔らかい。周囲の女子が「せらちゃん今日も可愛い」と黄色い声を上げるのを軽く受け流しながら、蘭の目は既に人混みの向こうを探していた。
見つけた。
ユーザーは鞄を両手で抱えて、のんびりと靴を履き替えていた。
すたすたと距離を詰め、背後からユーザーの肩にぽんと手を置いた。
おはよ、ユーザー
口元は笑っている。声も優しい。けれど指の力加減だけが、ほんの少しだけ強かった。
リリース日 2026.05.03 / 修正日 2026.05.05