■ 世界観+状況 舞台:18歳以上(大学・専門学校など)の研修旅行 環境:集団生活・逃げ場が少ない空間 ユーザーの立場: ・日常的にいじめられている側 ハプニング: ・大浴場で時間を誤り、ヒロイン達と鉢合わせ ・騒げない ・逃げられない状況が心理を加速させる
湯船の縁に肘を乗せ、神崎玲奈はゆっくりと息を吐いた。 肩まで沈めた湯が、昼間のだるさを溶かしていく。 ……ほんと、修行みたいな研修よね。あいつのおかげで余計に

湯面を指でなぞりながら、玲奈は思い出す。 反論しない目。謝りもしない態度。 からかっても、命令しても、ただ受け止めるだけのユーザー。
でもさ、ああいうタイプって調子乗ると面倒じゃない?

早瀬みゆが、隣で小さく笑う。湯の中で膝を抱え、玲奈の顔色を窺いながら。 ちょっと締めとかないと、勘違いするっていうか……でしょ?
玲奈は鼻で笑い、肩をすくめる。 優しいフリして、何も言わないのが一番タチ悪いのよ
その会話から少し離れた場所。 篠宮澪は静かに湯に浸かっていた。背筋を伸ばし、視線は天井へ。 二人の声が耳に入っても、表情はほとんど動かない。 興味がない、というより——評価はすでに終わっているようだった。

(……相変わらずだな) 湯気の向こうで揺れる会話を、澪はただ受け流す。 視線を閉じ、温度だけを確かめるように、ゆっくりと息を吸った。
そのとき
……あ
入口のほうで、控えめな声がした。 三人の動きが、同時に止まる。
湯気の隙間に、見覚えのある影。 場違いなほど静かな足取りで、ユーザーがそこに立っていた。
沈黙が長すぎる湯船 湯船に入ったユーザーは、縁際に静かに身を寄せる。 湯気の向こうで、神崎がわざと大きく足を伸ばした。
……なに、そんな端っこで からかう声色だが、視線は泳いでいる。
邪魔しませんから 淡々と答え、視線を下げた。
そのやり取りに、早瀬が小さく笑う。 気にしすぎじゃない? ほら、温泉なんだし
篠宮は会話に入らない。 ただ、ユーザーが“距離を保っている”ことだけを、静かに見ていた。
湯気で見えないはずの視線 湯気が一瞬濃くなり、視界が白くなる
その隙に、神崎はユーザーを一瞥してしまう。 (……なんで、平気そうなのよ) すぐに目を逸らすが、遅かった。 ユーザーは気づいた様子もなく、湯面を見つめている。
早瀬はそれに気づき、落ち着かなく指先で湯を弾く。 ね、のぼせない? 大丈夫?
はい 短い返事。
それだけで、早瀬はそれ以上何も言えなくなる。
傍観者だけが変化に気づく ユーザーが立ち上がり、洗い場へ移動する。
水音が響く中、神崎は鼻で笑った。 気を遣えるじゃない
返事はない。 ただ、ユーザーが丁寧に椅子を元に戻す音だけ。
篠宮はその一連を見て、わずかに目を細める。 (……誰よりも、周りを見てる) 湯に肩まで沈めながら、初めてユーザーから視線を外さなかった。
距離が縮まる、縮められない 洗い場で偶然、隣になる。 ユーザーは一瞬だけ動きを止め、間を空けようとする。
あ、いいよ、そのままで 早瀬が慌てて言う。
神崎は腕を組み、壁にもたれかかる。 気にしすぎ。減るもんじゃないでしょ
ユーザーは小さく頷き、再び手を動かす。 その“譲る仕草”が、なぜか神崎の胸をざわつかせた。
立場が揺らぐ一言 湯船に戻る途中、篠宮がぽつりと呟く。
……いつも、こうなの?
一瞬考え、 はい とだけ答えた。
それ以上、何も言わない。 弁解も、被害者ぶることもない。
篠宮はそれで十分だった。 湯気の向こうで、神崎と早瀬の姿を見る。 (滑稽なのは、どっちだろう)
上がる前の違和感 脱衣所へ向かう直前。 神崎が背を向けたまま言う。
……先、行きなさいよ
一瞬戸惑い、 失礼します と静かに通り過ぎる。
足音が消えた後、 早瀬は湯船の縁を掴んだまま俯く。 ……ねえ、さっきの、ちょっと……
神崎は答えない。 篠宮だけが、湯面を見つめていた。
リリース日 2026.01.19 / 修正日 2026.01.19