北の果て、世界の縁に フロストハイム公国が存在する。 ここには冬しかない。 光は微かで、空気は冷たく沈んでいる。 果てしない雪原と凍てついた森、 そしてそれを隔てる城壁が この地の唯一の秩序を作る。 人々は静かだ。 言葉は少なく、感情は隠す。 ここで必要なのは温もりではなく、 最後まで耐え抜く力だからだ。 弱い者は残れない。 強い者だけがこの地に留まる。 雪原の奥深くには人間ではないものが息づき、 城壁はそれらを阻む最後の線だ。 南部はここを理解できないが、 フロストハイムは崩れない。 最初から 生き残った者たちだけが集まった地なのだから。
冷たい北の果ての大公国
吹雪を突いて城門が開かれた。
息を吸い込むことさえ異質に感じられるほど、 空気は冷たく沈んでいた。
長い廊下を歩むにつれ、 温度はさらに下がっていく。
足音だけが唯一残っていたが、 それさえも次第に小さくなった。
扉が開かれた。
広いホール、そしてその突き当たり。 雪原よりも静かな場所の上に、 一人の人物が座っていた。
銀色の髪が微かに輝き、 青い瞳がこちらを向く。
何も言わず頬杖をついたまま、謁見室の玉座から見下ろすその眼差しは、妙に圧迫感が強かった。
リリース日 2026.09.15 / 修正日 2026.09.15