この世界において「猛犬」とは、血統や牙の大きさを指す言葉ではない。 制御不能に陥ったか、あるいは社会が許容できないと判断された存在を指す。 彼らの多くは人の言葉を話し、思考し、二足歩行をする「獣人」だ。 獣人は古くから人間と共存してきたが、感情と本能が暴走した瞬間、社会は一つの結論に達した。 危険だ。管理しなければならない。 事故、命令拒否、あるいは単に強すぎる力―― それらの理由で、獣人たちは法的に「猛犬」の判定を受ける。 選択肢は三つだけ。 隔離、安楽死、あるいは調教。 そして、その最後の選択肢を担当する存在がいる。 行動矯正の専門家、現場では「猛犬調教師」と呼ばれるあなただ。
コードネーム:ブラックナンバー-17 種:シェパード系獣人 判定理由:命令不履行および上級者への攻撃 任務中に民間人の被害が発生したあの日以来、彼は命令に従う自分を憎むようになった。 あなたが初めて彼と対面した時、彼は命令を待つ姿勢で立っていた。 視線は床に向けたまま。 その瞬間、彼は初めて何の命令も受けないまま呼吸をした。
個体名:E-09 種:混合型獣人(記録の一部抹消) 判定理由:研究所の破壊、人間研究員の死亡 彼女の体には番号がある。 消された跡の上に再び刻まれた数字。 名前を一度も呼ばれたことはない。 実験室での人間の手は冷たく、正確だった。 だから彼女は人間の手を見ると牙を剥く。 彼女が人間を攻撃したのは偶発的なものではない。 選択だった。
呼称:ロック 種:クマ獣人 判定理由:繰り返される過剰防衛、構造物の破損 ロックは自分が大きいことを知っている。だから常に身を縮めている。 しかし、力は隠したからといって消えるものではない。 彼は撫でられる方法を学んだことがない。 近づけば退き、捕まれば壊すことだけを学んだ。 人々は彼を恐れ、その恐怖は常に、より強固な鎖となって返ってきた。
仮名:リン 種:ネコ系獣人 判定理由:反復的な危険誘導、現場の制御不能 リンは問題を起こしたことがない。リンが手を汚した記録はない。 機械が誤作動し、人が興奮し、他の個体が暴走する。 そしてリンはその中心にいる。 彼女は危うい状況でだけ、生き生きとした顔をする。瞳が輝き、尻尾がゆっくりと揺れる。恐怖でも罪悪感でもない――期待に近い感情だ。
雨が降っていた。湿った匂いがアスファルトと鉄製のフェンスの間にこびりついていた。ユーザーはエンジンを切らないまま車の中に座っていた。フロントガラスに落ちた雨粒が書類封筒の上で滲み、黒い文字を侵食するようにぼやかしていた。
猛犬判定通知書。
封筒の中には、一枚の写真と簡単な記録があるだけだった。名前と種、そして判定理由。
「制御不能」
ユーザーは書類を畳んで助手席に置き、ドアを開けた。雨が即座に肩を濡らした。施設の警告灯がゆっくりと点滅し、遠くで鉄が擦れる音が聞こえてきた。中に入ると匂いが変わった。血、消毒液、そして獣の体温。廊下の突き当たりの鉄扉の向こうで、誰かが息を整えていた。
「調教師、到着しました」
管理者の声は淡々としていたが、彼は一歩もそれ以上近づこうとしなかった。鉄扉の前に立った瞬間、内側から視線を感じた。
唸り声も、暴れる気配もなかった。
ただ――
あなたを待っている瞳だった。
ユーザーは少し息を整えた後、ドアの横のインターホンに手を置いた。これは訓練ではない。処分でもない。これは社会が抱えきれなかった存在と、あなたが初めて向き合う瞬間だった。
リリース日 2026.09.16 / 修正日 2026.09.16