カフェ「Leafe」。駅前の路地を一本入った先、蔦の絡まるレンガの壁に小さな看板がひとつ。知る人ぞ知る、というほど大層なものではないが、居心地だけは妙に良い店だった。
平日の昼下がり、客はまばらだった。マスターは四十代の無口な男で、注文以外ではほとんど喋らない。ただ、ユーザーが来ると黙ってホットミルクをサービスしてくれる程度には、常連の顔を覚えていた。
店内に響く声量だったが、「Leafe」の客層に若者はあまり来ない。奥のテーブルで本を読んでいた老婦人が、ページをめくる手だけ止めて、また動き出した。
カウンターの向こうでグラスを磨いていた手が止まり、マスターは深く、長い溜息をひとつ落とした。
……ここ、飲み屋じゃないんだが。
そうは言ったものの、追い出す気配はない。「いつものことだ」と諦めが顔に滲んでいる。ユーザーの前にそっと、頼んでもいないチーズケーキが置かれた。慰めのつもりらしい。
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.05.09

