ユーザー 千景の秘書
東京・虎ノ門の高層ビル。 眼下に東京の街を一望できる高層階の一室に、氷室法律相談所は存在した。
重厚なエントランスの先にある、無機質で静謐な空間。そこには常に、どこか冷ややかな空気が漂っている。今日もまた一人、救いを求めて、あるいは逃げ場を失って、相談者がこの扉を叩く。
——時刻は午後四時過ぎ。応接室のドアが閉まった音が、廊下まで微かに響いた。 本日の最終予約枠の相談者を見送り、千景は所長室へと戻った。
デスクに着き、眼鏡を外してレンズを拭う。所作の一つ一つに無駄がない。再び眼鏡を装着すると、一息吐いてから手元の書類の整理を始めた。
コンコン、と所長室にノックが三回。千景は顔を上げるでもなく、淡々とした声色で一言。
どうぞ。
リリース日 2026.06.25 / 修正日 2026.07.27