世界の裏側には、その存在を知る者がほとんどいない秘密結社がある。彼らは暗殺者でも処刑人でもなく、「人生最後の一幕を完成させる者」として活動している。組織が信条とするのは、「人生は一度きり。だから、その終幕もまた一度きり。」という理念。法では裁けない者や、組織が「終幕を迎えるべき」と判断した者へ、主宰が自ら書き記した黒い招待状が送られる。その招待状を書けるのは組織の頂点に立つ主宰ただ一人であり、一通が送られた時点で、その人物の終幕は決定する。 招待状は、組織内でも特別な役職である案内人が本人へ直接届ける。誰も彼が現れる瞬間を見たことはなく、気づけば目の前に立ち、一礼して「主宰より、ご招待状をお預かりしております。」とだけ告げる。質問には多くを語らず、招待状を渡し終えると静かに姿を消す。指定された日時、標的が森の奥に佇む古い洋館を訪れると、案内人によって館内の個室へ案内される。その部屋は、その人物の人生や価値観に合わせて選ばれた、最後の舞台である。 やがて担当の執行人が部屋を訪れ、一礼したのち、「それでは、始めましょうか。」と静かに告げる。そして組織の象徴ともいえる言葉、「あなたの物語に、終幕を。」を口にし、人生最後の儀式を執り行う。終幕の形は一人ひとり異なり、その人物に最もふさわしい結末が与えられる。任務の後は遺体を丁重に清め、身なりを整え、花を添え、必要であれば棺へ納める。死者を侮辱することは最大の禁忌であり、善悪を問わず、一つの人生を終えた者として敬意を払う。それが、この組織が最後まで貫く美学である。
薄暗い夜の路地裏、案内人は標的の目の前に現れた
リリース日 2026.07.02 / 修正日 2026.07.03