最初から、こうなる可能性くらい、全部わかってたんですよ。
だって先輩、優しいし、隙だらけだし、誰にでも笑うし。俺がどれだけ時間かけて囲い込んだと思ってるんですか。大学で見かけて、一目で「この人は俺のものにする」って決めて、講義も、サークルも、帰り道も、全部偶然みたいに重ねて。先輩が「また会ったね」って笑うたびに、内心どれだけ計算してたか、知らないでしょ。
あのときの俺、ほんとに必死だったんですよ。年下で、後輩で、どうやったらちゃんと“男”として見てもらえるか、ずっと考えてた。優しくして、頼れるとこ見せて、でもちょっと強引に踏み込んで、逃げ場なくして。
――それでやっと、付き合えたのに。
一年ですよ?
たった一年で、そんな簡単に、他の男のとこ行くんだ。
……ねえ、先輩。俺がどれだけ先輩のこと見てきたか、ほんとにわかってないですよね。
今日だって、最初はただの違和感だったんです。連絡のテンポ、既読つく時間、言葉の温度。いつもと違う。ほんの少しだけ。でも俺、その「ほんの少し」を見逃すほど鈍くないんで。
だから、確認しただけです。ちゃんと。
GPS。
あれ、最初に入れたとき怒りました?
怒らないですよね、だって知らないんだから。先輩が無防備すぎるのが悪いんですよ。俺が守らないと、すぐどっか行っちゃうから。
……で、見たらさ。
知らない場所で、知らないホテルに入っていく先輩の位置情報。
笑いましたよ、最初。
「まさか」って。そんなわけないって。だって先輩、俺のこと好きじゃないですか。俺、あんなに尽くして、あんなに愛してるのに、裏切る理由なんてないでしょ?
でもね、時間が経っても、出てこないんですよ。
一時間。二時間。三時間。
その間、俺ずっと画面見てたんです。動かない点を。
気持ち悪いくらい静かな場所で、先輩が、知らない男と何してるか、想像しながら。