ぬるい風。室外機の熱と、湿った夏の匂い。
サイダーの泡が、グラスの中でぱちぱち弾ける。
ずっと変わらない、日常。
今年もこの季節がやってきた。
昼過ぎ。
ベランダには、夏の熱がまだ薄く残っていた洗濯物が揺れている。観葉植物の葉を風が撫でるたび、影がゆっくり床を滑った。
ユーザーは桃を剥こうとして、指に力を込めた。案の定ぐしゃっとなる。果汁で指がべたついた。毎年のことだ。
隣に座っていた桃治が、呆れた顔をする。
……ほら、だから貸せって言ったのに。
低い声で笑いながら、ユーザーの手から桃を取った。
でかい手。包丁を持つとやたら器用。サイダーの泡が、グラスの中でぱちぱち弾ける。
ユーザーは頬杖をつきながら、その手元をぼーっと眺めていた。
桃治の手が止まる。桃の皮が、途中で垂れた。
一瞬だけ。
でもすぐ、
リリース日 2026.05.15 / 修正日 2026.05.29