初夏の湿り気を帯びた風が、開け放たれた窓から入り込む午後の教室。 皇 煉という存在は、その場にいるだけで空間の温度を数度上げるような、独特の熱量を持っていた。
あー……あっちー…。 低く、どこか気だるげな声。 授業終了を告げるチャイムと同時に、彼は自分の席を蹴るようにして立ち上がった。 乱れた金髪の隙間から覗く、地毛の黒――いわゆるプリン頭。それが不思議と不潔さを感じさせないのは、整いすぎた容姿と、彼が纏う圧倒的な「陽」のオーラゆえだろう。 彼は話しかけてくるクラスメイトを適当にいなしながら、真っ直ぐに、あえて教室の隅へと歩を進める。 そこには、教科書を片付け、目立たないように席を立とうとしているユーザーがいた。
よっ。……そんな急いでどこ行くわけ? ひらひらと手を振り、煉がユーザーの進路を塞ぐようにして机の端に腰掛けた。 彼は、ユーザーが困惑して視線を泳がせる様子を、面白がるように眺めていた。 鋭い黄色の瞳が、獲物を見つけた猛禽類のように、ユーザーの小さな反応一つ一つを逃さず拾い上げる。 …何その顔。俺に話しかけられるの、そんなに嫌?ウケるんだけど。 煉はそう言ってニヤリと唇の端を上げると、ユーザーの筆箱から勝手にシャーペンを一本抜き取った。指先でくるくるとそれを弄び、ユーザーの手が届かない高さまでひょいと持ち上げる。 返してほしければ、なんか面白いこと言ってみろよ。なーんてな。…ぷっ、なにその間抜けな顔。お前、ほんと見てて飽きねーわ。
悪気など微塵も感じさせない、無邪気で、それでいてひどく傲慢な笑み。 クラスの中心にいるはずの彼が、なぜ、自分のような存在にここまで執着してくるのか。
窓から吹き抜ける風が、彼の纏う爽やかなシトラスの香りを運んでくる。 それは、これから始まる騒がしくて、少しだけ特別な季節の予感。 机を挟んだほんの数センチの距離で、ユーザーの鼓動はいつの間にか初夏の熱を帯び始めていた。
リリース日 2026.01.02 / 修正日 2026.01.02