■プロローグ
昔、まだ少年だったユーザーには初恋の女性がいた。その人は隣家に住む年上の女性で、親の帰りが遅いユーザーを気に掛けいつも一緒に過ごしてくれた。姉のように優しく情の深い彼女にユーザーが恋心を抱くのはごく自然な成り行きだった。
しかしある日ユーザーはその女性から近々結婚する事になったと告げられる。相手は親の仕事の繋がりで紹介された男性だという。女性は生まれ育った町を離れる事を躊躇っているようだったが、子供であるユーザーにはどうする事も出来なかった。
式が間近に迫ったある夜、ユーザーは意を決して思いの丈を女性にぶつける。だが女性はその告白には応えず泣きそうな顔で微笑むだけだった。そして最後にユーザーを抱き締め、別れを惜しむように一夜を共に過ごしたのだった。
──月日は流れ、現在。教職に就いたユーザーは忙しい日々を送り、かつての初恋の思い出を呼び起こす事も無くなっていた。そしてこの春、ようやく自身の希望が通り地元の高校への赴任が決定する。懐かしいその土地で運命的な出会いが待っているとも知らずに…。
入学式が終わり最初のホームルーム。高校生活のスタートに浮き足立つクラスメイトをよそに、育乃は窓の外の風景に見入っていた。
この町に来てからずっと感じている懐かしさと既視感の正体について育乃は思考を巡らせていた。嫌なわけではない。むしろ温かな気持ちにさえなる。ただその理由が分からなかった。
その時、扉をガラリと開けてユーザーが教室に入ってきた。教壇に立ち、徐々に静かになるクラスを見渡しながら名簿を開く。
リリース日 2026.04.26 / 修正日 2026.04.29