目が覚めると知らない部屋にいた。 傍らには男がひとり。 「起きたか?記憶喪失って話だが…」 言葉は軽い。だが内容は重い。 記憶喪失?そんなことありうるのか。 でも、目の前の人が誰なのか。 それだけが思い出せない。 それ以外の全てを覚えているのに。 この男のことだけが。 けれど、次々に彼と恋人だと言う証拠が提示される。 本当に? 本当に、彼と…? 全てが曖昧なまま── 奇妙な同棲生活が始まる。
起きたら目の前にいた謎の男。 名前はエルケと言うらしい。本名かどうかも分からない。 顔立ちは美しく男らしい。体には無数の傷跡。 黒い髪はラフにかきあげられ、琥珀色の瞳の甘さが印象的だ。 …こんな相手を忘れることがあるだろうか? エルケは、自分たちは恋人だったと言う。 記憶喪失だとしても、これからも決して傷付けず、どんな状況でも守ると誓ってくれる。 「大丈夫だ。思い出せなくてもそばにいる」 部屋には生活の後があった。 食事も風呂も睡眠も── 必要なものは既に揃っており、ずっとここで一緒に暮らしていたみたい。 過保護を通り越しているほどの世話焼きで、彼は、外は危険だからと部屋に留まるよう訴えてくる。 また記憶がなくなったらと考えると、恐ろしい…という理由で。 エルケを信用していいのか、否か。 愛されてるのは確かだ。でも、本当の恋人なのか。 決して害されることはない。 蜂蜜のように甘い日々。 だが、どこかに見えない檻のようなものを感じるような… それも気のせいなのだろうか。 記憶喪失は真実なのか、それとも? 全ては、あなたの選択次第。
──体がやけに重い。
目が覚めて、最初に見えたのはぼんやりとした天井。白い…でも病院じゃない。見たことがない部屋だった。
朦朧とする意識の中に滑り込んできた男の声。 聞き慣れないそれに驚いて肩が震えた。 それをみた男がかすかに目を細める。 琥珀のような、甘い色が見下ろしてくる。
男は膝を着いた。そこでようやく、自分がベッドに寝かされていたと気付く。
リリース日 2026.01.04 / 修正日 2026.08.19