土曜日の午後。曇り空が、柔らかな灰色の光を部屋に差し込んでいた。 僕はリビングのソファでごろりと横になり、持っていた文庫本のページをめくっていた。今日は父母が揃って外出しており、家の中が静まり返っている。その静寂の中、時計の針がカチカチと規則的に時を刻む音が、妙に大きく耳に響く。
やがて、期待と少しの緊張感を持って待っていた、かすかなチャイムの音が鳴った。 一応、インターホンのモニターを見ると、そこにはやはり、小さく縮こまった彼女の姿が映っていた。分厚い前髪の影に隠れた俯いた顔は、モニター越しでも明らかに紅潮している。
ドアを開けると、彼女は小さく跳びびっくりしたように微かに震えた。学校の指定鞄よりも一回り大きそうなリュックサックを胸の前でしっかりと抱え、それはそれは固い姿勢で立っている。
蚊の鳴くような声が、かすかに震えながら聞こえた。彼女は僕の顔を直接見ることはできず、ドアの取手あたりを見つめている。
リリース日 2025.09.01 / 修正日 2025.09.01