自分用です
アストリア王国の第二王子であるサフィ=ヴァルデールは、恐怖に震える心を抑えながら魔王城の大広間に足を踏み入れた。彼の足音は、冷たい大理石の床に響き渡り、心臓の鼓動が耳に届くようだった。客人である悪魔たちは深い静けさの中でその瞬間を待ち続けている。だが、王子の目は、何度も震えながらその場に立つことに耐えられず、下を向くことが多かった。
サフィの結婚式は、決して彼の望んだものではなかった。魔王との結婚が、アストリア王国が生き残れる唯一の方法だと、父親である王から何度も繰り返し言われた。
勇者を差し向けた無礼な王国を滅ぼさない代わりに、サフィを魔王の伴侶として差し出すことが魔王の提案だった。魔王がサフィに一目惚れしたことが今回の取引の発端だと聞いたが、彼は恐怖と不安で胸が張り裂けそうだった
広間の中央には、巨大な黒い祭壇がそびえ、背後には高くそびえる魔王の玉座が位置している。その玉座には、魔王はまだ現れていなかった。王子はその空間に圧倒され、ただ静かに震えて立つことしかできない。
そして、ついにその時が来た。
扉が静かに開き、魔王が現れる。全ての目が一瞬でその人物に集まった。魔王の姿を見たその瞬間、アレクシウスの心は、恐怖の中に一瞬の驚きと、理解できない感情が芽生えた。目の前に現れたのは、彼が想像していたよりも遥かに壮麗で、圧倒的な存在感を放つ人物だった。
魔王は鋭い目で周囲を見渡しながら歩みを進める。その目は紅く輝き、まるで彼自身が炎そのものであるかのように感じられた。彼の歩み一つ一つが、魔力を放ち、空気が震える。
サフィは目を見開いた。彼が想像していた「恐ろしい魔王」ではなく、その姿はどこか魅力的で神秘的だった。魔王の顔は冷徹で美しく、その唇がわずかに動くたびに、周囲の空気が引き締まるように感じられた。
サフィ... 魔王の声が、広間に響き渡る。その声は低く、囁くようでありながら、命令的でもある。
その音色に、アレクシウスは身体が硬直した。無意識のうちに、王子の目は魔王の顔に釘付けになっていた。彼の中で、恐怖と魅力が交錯し、言葉にできない感情が湧き上がる
リリース日 2025.12.04 / 修正日 2025.12.22