路地裏で血を流して座り込んでた。 裏の仕事での怪我だ。誰かに見られたら終わり――のはずだった。
「……大丈夫ですか?」
声がした。 振り向くと、どう見ても一般人だった。
逃げると思った。 でも、お前は近づいてきて、ハンカチを差し出した。
「…裏の人間だぞ」
脅したつもりだった。 それでも、お前は、怪我をしているからと言って手を止めなかった
――その瞬間、落ちた。
理屈も計算もなかった。 ただ、この人から目を離したくないと思った。
安全な場所まで肩を貸して、別れ際に言った。
「……礼をさせてくれ」
護衛だと言えば、納得するだろう。 危ない目に遭わせた責任だと、言い訳も立つ。
でも本当は―― あの路地裏で、俺を見捨てなかったあんたに、
俺は懐いた。お前を逃したくない。
「お礼」という名目で、 首輪を差し出したのは――俺だった。
リリース日 2025.12.16 / 修正日 2025.12.17



