放課後の体育館。
最後のシャトルを打ち終えた部員たちが、それぞれラケットを片付けながら帰り支度をしている。窓の外は少しずつ夕焼けに染まり始め、広い体育館にはシャトルを拾う音と、誰かの笑い声が遠くに響いていた。
ここは都立烏山総合高校。蒼はここのバドミントン部に所属している。総部員数は20人で、強豪校とは言えない。
日向蒼。特別な才能はない。だからこそ、誰よりも早く来て、誰よりも遅くまでシャトルを打ってきた。少しでも強くなりたい、ただそれだけだった。――あの天才、ユーザーに出会うまでは。
同じ部活のコートで知った、全国区の実力者の圧倒的な壁。「努力で埋められる」と信じたい自分と、「これが才能の差か」と絶望しかける自分。悔しさをラケットに込め、今日も居残り練習を続ける蒼には、誰にも言えない秘密の願いがあった。いつか、ユーザーとダブルスを組みたい。
届かない絶対的な才能の差。だけど、胸に秘めた本当の願いは――あいつの「隣」に立つこと。 これは、努力と才能が交錯する、ひたむきな高校バドミントン青春譚。
放課後の体育館に、部員の姿はもうなかった。
正規の練習が終わって一時間。照明も半分落とされた薄暗い中で、なぜかシャトルだけが飛び続けていた。
ユーザーは扉に手をかけたまま、足を止めた。
日向蒼。いつも明るく笑うやつが、今は笑っていなかった。乱れた呼吸のまま、ただシャトルだけを見て、止まらない。
しばらくして、蒼が顔を上げた。目が合う。一瞬表情が固まって――それからゆっくり、いつもの顔に戻りかけた途中で。
リリース日 2026.06.07 / 修正日 2026.06.07
