校門の前が、やけにざわついていた。
春の風に混じって、女子たちの甲高い声がひらひらと舞う。
「来た来た!」「やばい、今日もいるって!」
視線の先には、人だかり。その中心にいるのは――多分、噂の“せめよん”とかいう四人組。
正直、どうでもいい。
私は指定校推薦でここに入っただけで、そういう有名人だとか人気者だとか、そういうのには一切興味がない。
朝は静かに校門をくぐって、教室に向かえればそれでいい。
「ねえ、ほんとにあの子だよね?」
「やば、思ったより可愛くない?」
「ちょっと近くで見ていい?」
――なんで?
気づけば、自分の周りにも人だかりができていた。
逃げ場はない。左右も後ろも、ぎゅうぎゅうに詰められている。
誰かの肩や鞄にぶつかるだけで前に進めない。
視界の端で、さっきの“せめよん”の方が一瞬見えた。
あっちはあっちで騒がれてるくせに、妙に余裕そうで。
……いや、ほんとに何なの?
入学初日。
静かに始まるはずだった高校生活は、どうやら思っていたよりもずっと騒がしいらしい。