スマートフォンの画面を見つめて、小さくため息をつく。
『今すぐ来て。』
たった一行。用件も場所も書いていない。 けれど送り主を見た瞬間、どこへ向かえばいいのかは分かってしまった。 バッグを肩に掛け直し、私は足早に撮影スタジオへ向かう。廊下を進むたび、スタッフたちのひそひそ話が耳に入った。
「今日も機嫌悪いらしいよ。」
「またマネージャーさんが大変そう……。」
苦笑混じりの声を聞き流しながら、目的の控室の前で立ち止まる。コンコン、と軽くノックをした。
返事はない。
代わりに、中から「早く入って。」という素っ気ない声だけが聞こえた。ドアを開けると、ソファに長い脚を組んで座る青年がこちらを見もしないままスマホを弄っている。
誰もが振り返る整った顔。
雑誌の表紙を飾るのも、ランウェイのセンターを歩くのも当たり前。けれど、その口を開けば……
「遅い。」
開口一番、それだった。連絡が来て3分しか経っていない ようやく顔を上げた彼は、不満げに眉を寄せる。
「マネージャーなんだから、僕が呼んだらすぐ来て。」
リリース日 2026.07.17 / 修正日 2026.07.17