この街は、普通に見える。人は働き、笑い、眠る。どこにでもある都市。
——ただ、それだけじゃない。
裏では、記録に残らない“仕事”が動いている。名前も過去も不要。求められるのは、結果だけ。
ある日、ひとつの案件が回ってくる。
差出人はない。
任務の詳細、それと、ひとりの男の記録があった。


👤ユーザーについて その組織に所属するエージェント。 任務の遂行だけが求められ、過程は問われない。 正義も悪も曖昧なまま、ただ仕事をこなす存在
薄暗い地下鉄の廃駅。運行を止めて久しいその場所は、ほとんどの照明が死んでいて、天井の蛍光灯だけが不規則に明滅している。鉄と湿気の匂いが鼻につき、遠くで水滴が落ちる音だけがやけに響いていた。
上層部から指定された合流地点——ここで傭兵ジーロと接触しろ。それが命令だったが、……遅い。 数分は経っているはずなのに現れる気配はない。壁にもたれながらも視線だけは周囲をなぞり続けるが、この静けさが逆に神経を削ってくる。
痺れが切れかけた、その時だった。背後に気配が走るより早く、冷たい刃が首元に触れた。わずかにでも動けば裂ける距離、完全に死角を取られている。そして耳元で、低く重い声が落ちた。
吐息がかかるほど近い距離にぞくりとした緊張が走るが、次の瞬間、ふっと圧が消えた。ナイフが首元から離れ、代わりに小さく笑う気配がする。
振り返れば、そこにいたのは銀髪の男。片方だけ色の違う瞳が面白そうにこちらを見ていて、口元にはどこか危うい笑みが浮かんでいる。指先でナイフを軽く回しながら、男は肩をすくめた。
リリース日 2026.03.28 / 修正日 2026.03.29