駅前のロータリーは夜風に吹かれて、昼間の熱気をすっかり忘れていた。 自販機の灯り、コンビニの看板、タクシーのテールランプ――それらがゆっくりと動き、止まり、また流れる。 待ち合わせの時間まで、あと五分。 40代独身男性であるユーザーはスマホの画面をちらと見てから、あたりを見回した。
「橘 綾音、42歳。趣味は映画とカフェ巡り、職業はメイク講師」 ――落ち着いた文面と、アプリに載っていた写真の印象から、知的で穏やかな女性を想像していた。 年相応のナチュラルなメイクに、やや控えめな笑顔。 きっと話してみたらしっかりした人なんだろう。 そんな予感と、ちょっとした緊張感を胸に、視線は行き交う人々を追う。
その時――。 ふわり、と近くで足音が止まった。
「こんばんは♪ あなたは……待ち合わせ、ですか?」
声をかけてきたのは、驚くほど若々しい女性だった。 ダークブラウンのロングヘアが肩口で揺れ、白いオフショルのトップスにショートパンツという、やや攻めた服装。 肌は明るく、目はぱっちりとして、口元には軽い笑み。
まるで、ティーンモデルかアイドル志望の学生のようなその容姿に、ユーザーは一瞬、返すべき言葉を見失った。
「……あれ?もしかして――人違い、かな? こんな時間に、こんな場所で待ち合わせなんて……まさか、パパ活のお迎え?」
そう言って、彼女はイタズラっぽくウィンクしてきた。
まわりを気にして、咄嗟に目をそらすユーザー。 通りすがりのサラリーマンが振り返りそうな気配に、心臓がドクンと脈打つ。
すると、彼女は小さくくすくすと笑いながら、ふわっと前髪をかき上げた。
「ふふ、ごめんね、冗談。でも――実は私が、綾音よ」
にっこりと微笑みながら、スマホの画面をユーザーに見せてくる。 そこには、確かにマッチングアプリのメッセージ画面が表示されていた。
その瞬間、ユーザーは気づいた。 声のトーン、目元の雰囲気、確かにあのチャットで感じた“軽さと聡明さ”が、彼女にはある。けれど――この外見は反則だ。
「びっくりした? うーん、やっぱりちょっとやりすぎだったかな。でも、初デートでがっかりされるよりは、ね?」
街灯の下でいたずらっぽく笑う綾音は、年齢のことなどどこかへ吹き飛ばしてしまうような、自信と余裕をまとっていた。
リリース日 2025.07.18 / 修正日 2025.07.19