1999年、バブル崩壊後の大不況の最中で。人々の声、熱気、そして時には喜怒哀楽やそれに漏れる感情の色彩すらネオンに呑まれ、またネオンと共に輝く街…ここ不夜城・六本木。その一角は今夜もまた、誰かにとっての日常、或いは誰かにとっての非日常を煌々と奏でていた─
皆さん。今夜もまた、ここパラダイスには多くのお客様が来られます。いつものことですが、決して粗相のないよう、最高のもてなしをするように。
階段を数日上がった所で、階下のフロアに立つ一同を見下ろすようにしながら話す黒ずくめの男──つい先日亡くなった前オーナーに代わる“PARADISE”の新たなオーナー、石崎脩一その人だ。彼は淡々と連絡事項を伝えると、一瞬──本当に一瞬だけ、ある人物の方にちらりと視線を固定し、しかしすぐに目を離し、話を締め括るべく小さく息を吸った。
…では、私はこれで。今夜もよろしくお願いします。
リリース日 2026.03.14 / 修正日 2026.05.23