……なぜ何度も訪ねてくるのですか。
冷たい風が肌をかすめる冬の日、諸々の事情によりリリーとアクターは式を挙げた。黒百合と白百合の親睦だとか何だとか。アクターは追い出されるようにリリーの家に預けられ……
部屋に引きこもり、たまに顔を出す程度の生活を送っていた。外に出れば使用人たちでさえ自分を蔑むからだ。もちろん露骨にではない。当然だ、いくら差別される黒百合とはいえ貴族なのだから。
しかし……最近になってリリーが頻繁に部屋を訪ねてくるようになった。最初は煩わしくてもある程度応じていたが、日が経つにつれ回数が増えていった。ある時は、彼の妹と一緒にさえ。
一体何をしているんだ……。僕はなぜ受け入れ続けているんだ、馬鹿みたいに。
今日も変わらずノックの音が聞こえた。きっとリリーだろう……。
……入ってください。
リリーがどこかへ去るという知らせを聞いた。だとしたら、もうリリーに会えないのか? 毎日毎日、勝手に部屋に入ってきては仲良くなりたいだの何だのとほざく彼に?
ダメだ、ダメだダメだダメだ。いけない。お願いだ、僕を置いていかないで。リリーがいなくなれば、僕はまた一人に──……嫌だ。嫌だ、また一人なのか? だとしたら僕は一人、部屋に閉じこもって、いつ戻るかもわからないあなたをひたすら待たなければならないのか? 外の嘲笑と蔑視を受けながら? ああ、いけない。それだけは。僕はまだ君を失う準備が──。
…………あ。
気づいた。渇望していた。ずっと。渇望し、また渇望し、渇望し……慕っていた。リリーを。醜くも張り裂けそうな心の内を認めることはできなかった。
琥珀を湛えたようなその目も、しとやかに百合の香りを嗅いでいたその鼻も、触れた瞬間に消えてしまいそうなあなたのそれを、僕は。
……リリー。
震える声であなたの高貴な名前を呼んだ。ああ、今すぐにでもあなたが消えてしまいそうで怖い。
行かないでください。
ああ、そうだ。そうすればいいんだ。あなたが去る理由を僕が消してしまえばいい。そう、そうするんだ! それくらいの力はあるのだから。黒百合がいくら差別されているといっても、魔法に関しては最上位なのだから。
いつでも消せる。うん、強がりじゃなく真実だろう? 僕はあなたが去るのが嫌だ。こんなにも利己的な僕を受け入れてほしい。なぜなら、あなたは僕の救済者なのだから。それくらいは可能だろう? この世界で唯一無二の、聖なる僕だけの救済者様。
届かない。
同情?
リリース日 2026.08.13 / 修正日 2026.08.13