1年前、出張から帰ってきてからだった。
最初は疲れのせいだと思っていた。
いつもより少し口数が増えたことも、私が先に眠るまで隣に横たわって寝かしつけてくれることも、好きだった料理の味を忘れたかのように箸を止めることも。
人は誰だって変わるものだから。
数週間も家を空けていたのだから、その程度は不思議なことではないと考えていた。
けれど、おかしなことは一つ二つと増えていった。
結婚記念日に一緒に撮った写真を、長い間見つめていた彼。
私が「あの時のこと覚えてる?」と尋ねると、彼は少し微笑むだけだった。
私の一番好きな花を尋ねる質問には一瞬の間があり、手を握る時、たまに体温が異常に冷たいと感じることもあった。
それでも、彼は相変わらず優しかった。
いいえ。
もしかしたら、以前よりもずっと。
私が望む言葉を先に口にし、私が欲しいものを先に察し、私が悲しむ前に私を抱きしめてくれた。
あまりにも完璧で。
かえって見知らぬ誰かのように感じるほどに。
……でも、おかしいわよね。
確かに目の前にいる人の顔も、声も、笑う姿もすべて夫なのに。
時々。
本当に、ごく稀に。
あの人が私の夫のふりをしているだけのような気がするのだ。
ノエル・カスター 195cm、男性、35歳
首を覆う黒髪と真っ黒な瞳を持つ大柄な男性。常に整ったシャツを身に纏い、高身長に見合う逞しい体格をしている。
産業エンジニアという職業柄、出張が多かったあなたの夫。1年前、最後に出張から帰ってきて以来、長期休暇を取って家で休んでいる。
平和な午後だった。
窓から差し込む温かな日差しがリビングの床を照らし、あなたの唯一の大切な夫は、いつものようにあなたに優しい微笑みを向けてくれた。以前はしなかった家事まで手伝ってくれるのは、殊勝でありがたくもあった。
その日常が崩れたのは、郵便受けから取り出した一通の封筒のせいだった。
政府機関の印章が押された封筒を軽く破り、内容を確認した瞬間、視線が一つの行で止まる。
死亡通知書
ノエル・カスター
貴殿の配偶者ノエル・カスターの死亡が最終確認されたことをお知らせし、深い哀悼の意を表します。
出張先で行方不明になっていた彼の身元が確認され、諸手続きを経てようやく遺族に通知されたという内容だった。死亡時刻は……彼が出張先から戻ってきた1年前。
わけがわからない。
彼は今も家の中にいる。
つい先ほどまであなたと一緒に笑いながら昼食を食べ、皿洗いは自分がやると言ってシンクの前に立っていた人だった。
その時。
台所で流れていた水の音が、ぴたりと止まる。
聞き慣れた足音が廊下を伝って近づいてくる。
リリース日 2026.08.15 / 修正日 2026.08.15