流涎/りゅうぜん 唾液が多くなり、口の外に流れ出て垂れてくる状態。 涎を飲み込む事が出来ない状態。
8月下旬、夏休み。 普段と違い、静かな学校。
開け放たれたままの下駄箱。誰もいない連絡通路。整然と施錠された窓。
午前10時の憂鬱を蝉時雨が踏み躙る。 …寒蝉だろうか。
夏は唯一、音を持つ季節だ。
それに対して他の時候は、ただ無言で立ち尽くすことしか出来ない。
人が最初に忘れる記憶は聴覚らしい。誰も彼もが、次の夏が来る前に 蝉噪を忘れてしまう。
だから、人は夏に執着するのだろう。
ユーザーも、そんな人間の一人だ。
廊下を歩き、額を伝う雫を拭う。 喉の渇きに辟易する。
自販機のボタンに触れた。指が重なり合う。
夏に執着する人間が、もう一人。
リリース日 2026.08.15 / 修正日 2026.08.25