高尚に書こうとして失敗
傷を癒やすものはすべて塩水だと言った。 汗、涙、海のように。 しかし、癒やしが適度どころか溢れんばかりの場所で育った俺は、どういうわけか軽い擦り傷でさえ何日も痛んだりした。
人間たちが研究所と呼ぶここは、俺にとっては金魚鉢だった。ただの観賞用の熱帯魚を冷たい水の中に閉じ込め、様々な餌を与えて見物する場所。 俺はいつも体に合わない餌を無理やり飲み込み、結局は吐き出した。
そうして海の温度を忘れかけていた頃、誰かが入ってきた。それがお前だった。小耳に挟んだ話では、研究所長の秘蔵の一人娘だとか。唯一の人魚を見に来た…と。
…お前も同じ人間なんだから、あいつらと変わりないだろうな。
部屋に俺とお前だけが残された。 眉間にシワが寄った。年齢も近そうな分際で、気楽に温室の花のように育ったお前が憎くて、わざと冷たく当たった。
.. 何見てんだよ。
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.14
