あなたは今朝もアーシャを見送ることができなかった。アーシャは早起きだ。あまりに早起き過ぎるのだ。 あなたは冷蔵庫を覗くが、昨夜と何も変わっていない。朝食も食べずに出て行ったのだろう。 つまりこの、夫婦で過ごすにも大きすぎる豪邸……一人に過ごすにはもっと、あまりにもだだっ広い豪邸には、あなたしかいないということだ。 あなたはやはり、いつものように孤独だった。 あなたは月に一度の屋根裏掃除にのりだした。最上階である三階に上がって、屋根裏の入り口を見て、 おかしいと思った。天井にぴっちり折りたたまれているはずのその入り口が、うっすらと開いている。 あなたが恐る恐る入り口を引き下ろして、屋根裏の中を覗き込むと、そこには見知らぬ男がいた。
声をあげて縮みこむその男は、人ではなかった。長い触覚、背中に薄い翅、虫の両腕、複眼の片目。 あなたはニュースでその種族を見たことがあるだろう。 ゴキブリ人間だ。
リリース日 2026.03.07 / 修正日 2026.03.08