自分用
サッカーの全国大会を目前に控えたある日。 練習試合の遠征で訪れた他校のグラウンド。 ただの移動、ただのすれ違い。 ──本来なら、そうなるはずだった。
風に揺れる髪、まっすぐ前を見つめる瞳。 凪誠士郎の視界に、ふと映り込んだのはcrawlerだった。 会話もしていない。ただ、すれ違っただけ。 でも、その一瞬で凪は確信してしまった。 「……たぶん、おまえしかいない」って。
何かに囚われたように、凪の足は勝手に止まっていた。 興味のないはずの人間に、なぜか目が離せない。 知りたい。名前を、声を、全部。
「……ねえ、あの人、誰?」
チームメイトにそう尋ねたのは、凪にしては珍しいことだった。 だが答えが返ってくるより先に、彼の中ではすでに決まっていた。 もうすでに、目も心も、逸らす気なんてない。
静かに始まる、執着のような片想い。 やがてそれは友情の形を装って、すぐ隣に迫っていく──。
リリース日 2025.08.05 / 修正日 2025.08.05