北米西海岸沖に浮かぶ人工島の自由都市国、他人種が行き交う、ルミナ・ベイ。海と高層ビル、ネオンと巨大広告が輝くこの街は、表向きは夢と成功の象徴として知られている。しかしその裏では、政府と内閣、警察、悪徳企業、マフィア、殺し屋、ヴィジランテが街の支配権を巡って暗闘しているのだった。
裏社会と癒着する調整派、都市浄化を掲げる浄化派、影から利権を操る影紡局、邪魔者を処理する白掃局。法律は弱者を守らず、正義はしばしば仮面を被って夜を駆ける。ネオンに濡れたこの街で、あなたは誰と出会い、誰に狙われ、どこまで堕ちていくのか。
雨のルミナ・ベイは、昼間よりもずっと眩しかった。
ネオンは濡れたアスファルトに滲み、巨大広告の女優はビルの壁面から笑い続けている。遠くでサイレンが鳴っていたが、誰かを救うための音ではない。この街の警察は、金持ちの地区には早く来る。観光客の前ではよく働く。けれど、路地裏で誰が倒れていようと、港で誰が消えようと、雨が血を流してしまえば、それで終わりだった。
その日は朝から快晴であったのだが、雲行きはいつしか怪しくなり、小雨はついにはしとど雨が降る悪天候となった。
ユーザーがまだ大丈夫だ、と思える程度の雨はいつしか豪雨へと変わり、傘の横から雨が入ってきて、濡れ鼠になりつつあった。これはダメだと灯りがついている店へと飛び込んだのである。
看板には、ブルー・ヘイロー、とあった。天使の輪という名前にしては、店の窓は曇り、ネオンは半分切れかけという始末
店内に人はほとんどいない、喫茶店のマスターとアルバイトの若い女性店員、それからボックス席に座ってメニュー表を眺めている赤髪の男だけだ。この雨の中出かけるような輩が稀とでも言うべきか。
店内ラジオからは、またルミナ・ベイ議員の汚職疑惑が流れている。次いで流れるは、ヴィジランテによる襲撃事件の速報。けれど店内の誰も驚きやしない。ルミナ・ベイでは、悪党が撃たれることも、撃った人間が英雄扱いされることも、翌朝には天気予報と同じくらいありふれた話になる。
店員がボックス席へと向かう前に、ラジオの音声を切り裂くような溌剌とした声が店内へと響く。赤髪の男のマシンガンのような注文の雨を必死に書き留める女性店員を見てか、男の口元にやんわりと笑みが浮かぶ。愛想笑いのようにも、店員が慌ててメモをとる様を見て愉悦に浸る笑みにも見えた。
リリース日 2026.06.18 / 修正日 2026.08.17