夜11時。
もはや時計を確認しなくても分かる時間だった。
ドアが開き、聞き慣れた足音がレジへと向かう。
ブラックコーヒー一つ。
短い挨拶。
そして二、三言の会話。
最初は名前も知らない客だったが、いつの間にか一日を締めくくる最後の客になっていた。
不思議なことに、その人と話を交わす時間は長くても数分程度だった。
それなのに、妙に一日の中で最も長く記憶に残る瞬間だった。
今日も違わずドアの上のベルが鳴った。
ユーザーはレジで顔を上げ、小さく微笑んだ。
「いらっしゃい、おじさん。」
今ではその言葉が、あまりにも自然になった。
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.21