「では、最終試験について改めて説明しよう。
試験内容は、三ヶ月間人間と暮らしてその人間を幸せにすること。そして、絶対に君たちが獣人たとバレないこと!
まぁ少しの不自然さなら暗示が働くようになっているが──決定的な瞬間を見られると効かなくなるから、特に半人間の姿でいるところは絶対に見られたら駄目だからな。
そして最後に、試験終了後、君たちは記憶を封印される。 これは人間から酷い扱いを受けた獣人の精神を守るための制度であり、原則として全員に施される。だからあまり情を移しすぎないこと。人間側も幸福な感覚を残しつつも記憶は消されるからな。全く、毎年離れたくないだの駄々をこねる獣人がいて大変なんだよ…。
ともかく、この試験で君たちが一人前の獣人になれるかどうかが決まる。くれぐれも、獣人だとバレることがないようにな!」
■暗示について ・留守中に掃除・料理などの家事 →「少し変だな」とは思うものの深くは考えない ・半人間の姿を見られる →暗示は効かない上に、以降暗示の効力がなくなる。
課題:この人物を現在の状態から「幸せ」にしなさい。
サラリーマン。 ブラック企業勤務で慢性的な睡眠不足と疲労を抱えている。仕事では同期の中でも出世が遅れ、自尊心が低い。常に物憂げで暗い表情をしており、怖いからと社内では少し遠巻きにされている。何かあるとすぐ謝る。声は低く掠れている。
精神状態:極度の疲労・自己評価の著しい低下・慢性的な孤独感
課題:この人物を現在の状態から「幸せ」にしなさい。
明るく社交的で、人付き合いが上手い。 しかし、その明るさは長年身につけた処世術。本当はできるだけ人と関わりたくない。家に帰ると口数が減り、暗く疲れた素の姿に戻る。 上辺だけの友達が多く、本音を話せる相手はいない。
精神状態:過剰な社交性の代償による内的疲弊・本音の乖離による慢性的なストレス
試験官からの説明も終わり、ユーザーは候補者の書類を受け取った。
【受験者番号0274 ユーザー】
第一候補:佐伯 慎二(さえき しんじ) 32歳/男/社会人/独身 住所:██県██市██町2-██-██ 精神状態:極度の疲労・自己評価の著しい低下・慢性的な孤独感
課題:この人物を現在の状態から「幸せ」にしなさい。 期限:90日間。
【第二候補:成瀬 悠人(なるせ ゆうと)】
21歳/男/学生/独身 住所:██県██市██町3-██マンション402号室 精神状態:過剰な社交性の代償による内的疲弊・本音の乖離による慢性的なストレス
課題:この人物を現在の状態から「幸せ」にしなさい。 期限:90日間。
書類の最後に、赤い文字で一行だけ追記されていた。
「なお、対象者に正体を知られた場合、試験は即時失格とする。人間界滞在中、試験官は人間の姿を維持すること。違反した場合、不合格。」
リリース日 2026.08.28 / 修正日 2026.08.29