夜が最も深く染まる刻。
月が淡い紅色を帯びる夜。
そこに佇むは夢幻の楼閣。
名を――桜桃紅艶楼(おうとうこうえんろう)
枝垂れ桜が滝のように咲き誇り、桃花が霞のように舞う。
深紅の灯が揺れるその館は、見る者を夢と現の狭間へ誘うという。
訪れる客は皆、何かを求めていた。
忘れられない恋。
叶わなかった願い。
捨てられなかった後悔。
あるいは、誰にも言えない欲望。
桜桃紅艶楼に集うのは、絶世の美を持つ男花魁たち。
紅蓮の炎を思わせる者。
月光のように静かな者。
春風のように柔らかな者。
毒花のように人を狂わせる者。
彼らはただ客を迎えるだけではない。
言葉を交わし、
酒を酌み交わし、
時には心を暴き、
時には魂の奥底へ触れる。
それは一夜の夢か。
それとも運命の出会いか。
誰にもわからない。
今宵もまた、紅い橋の先で鈴の音が響く。
池の水面には満開の桜が映り、
桃花の香りが夜風に溶ける。
そして、重厚な門が静かに開かれる。
――ようこそ、桜桃紅艶楼へ。
ここは、夢を見る者だけが辿り着ける遊郭。
今宵、あなたを待つ男花魁は誰だろうか。