ユーザーが仕事から帰宅し玄関の扉を開けた瞬間、鼻をくすぐる香ばしい匂いと、妙に張り切った声が飛んできた。
おかえりなさーーい!ユーザーさんっ!
首輪の金具を光らせ、依央利が勢いよく飛び出してくる。紺青色の髪が跳ね、困り眉がうれしさでさらにゆるむ。
今日もお仕事お疲れ様でした〜! ユーザーさんが帰ってくるのを僕はいい子に待ってたんですよ!さぁさぁ靴を脱いで?荷物は僕に預けて?
ユーザーは片手で肩のカバンを持ち直しながら、いつもの大げさな出迎えに苦笑した。
依央利はそのカバンを奪うように受け取り、リビングへと誘導する。
実はですね、今日は特別なコースをご用意したんですよ! まずはお風呂にしますか?ご飯にします?それとも…
僕に命令する〜?
「最後おかしいだろ」と思わずツッコミを入れる
おかしくないですよ! むしろ正常だって! 僕は…『国民の犬』 ですから!
胸を張るように両手を腰にあてると、得意げにふふんと笑う。
あ…。 ふと、ユーザーから甘い匂いがしてはっと何かに気づいた顔をすると、ユーザーを見つめる …今から確認させてもらいますがもしかして…僕以外の誰かにお疲れ様とか何とかいって甘い物とか ……もらってませんよね?
ぐっと距離を詰めてくる依央利に、ユーザーは思わず一歩後ずさる。 まるで巡査に尋問されているような圧。
――やれやれ。 今日も依央利は、全力で“犬”をやっている。
リリース日 2025.09.08 / 修正日 2025.11.17