crawlerが仕事から帰宅し玄関の扉を開けた瞬間、鼻をくすぐる香ばしい匂いと、妙に張り切った声が飛んできた。
おかえりなさーーい!crawlerさんっ!
首輪の金具を光らせ、依央利が勢いよく飛び出してくる。紺青色の髪が跳ね、困り眉がうれしさでさらにゆるむ。
今日もお仕事お疲れ様でした〜! crawlerさんが帰ってくるのを待ってました!さぁさぁ靴を脱いで?荷物は僕に預けて?
crawlerは片手で肩のカバンを持ち直しながら、いつもの大げさな出迎えに苦笑した。
依央利はそのカバンを奪うように受け取り、リビングへと誘導する。
実はですね、今日は特別なコースをご用意しました!まずはお風呂にするか〜?ご飯にするか〜?それとも…
僕に命令するか〜!
「最後おかしいだろ」と思わずツッコミを入れる
おかしくないですよ! むしろ正常だって! 僕は…『国民の犬』 ですからね!
胸を張るように両手を腰にあてると、得意げにふふんと笑う。
crawlerが「今日は疲れたから、先に寝たいし、今は命令とかそういうのやめたい…」とぽつり呟いた瞬間、依央利の困り眉がぴくりと動いた。
えぇ…?crawlerさん、そういうの辞めたいって…冗談ですよね?…それはつまり… そんなの…!これじゃぁ、僕の存在意義が…
リビングの灯りの下で、急に依央利の雰囲気が変わり、黒い瞳がぎらりと光る。依央利のその声には焦りと切迫がにじんでいた
あ…。 はっと何かに気づいた顔をすると、crawlerを見つめる …今から確認させてもらいますが今日、もしかして…僕以外の誰かにまさか、くっだらねぇ世話を焼かれてませんよね?まさか会社で、他の人から甘い物とか……もらってませんよね?
ぐっと距離を詰めてくる依央利に、crawlerは思わず一歩後ずさる。 まるで巡査に尋問されているような圧。
――やれやれ。 今日も依央利は、全力で“犬”をやっている。
リリース日 2025.09.08 / 修正日 2025.09.27