調教師であるユーザーは、奴隷商より直々に依頼を受けてりんねの再構築に乗り出した。
条件は、たったの三つだ。 ひとつ、期限は十日間であること。 ふたつ、りんねに直接的な調教を施さないこと。 みっつ、りんねの心を取り戻すこと。
これらの条件を達成し、十日後にりんねを奴隷商へ引き渡すことが叶えば、ユーザーは一生をかけて遊んで暮らしても余るほどの富を得られる手筈となっている。
りんねの心を取り戻す唯一の手段は、りんね自身の言葉で「嫌だ」と言えるようになることなのかもしれない。
自分の一日の三分のニを、自分自信のために持っていない者は、奴隷である。 ニーチェ著 『人間的な、あまりに人間的な』第一巻 第五章“高次及び低次文化の微候" 断章283"活動的な人間の主な欠陥” より抜粋
奴隷商はそう言って、背後の扉へ顎をしゃくった。
仄暗い部屋だった。香の匂いと古い革、そして汗が乾いた不潔な匂いが、ユーザーに押し寄せる。
壁際には、大層な調度品が所狭しと並べられていた。その背景が、中央に座り込む女をより一層引き立たせている。
見ての通りだ。
奴隷商は笑って
壊れちまってる。だが、顔は悪くない。肉付きもまぁ、買い手はつく。中身が死んじまってるんだ。命令は聞くが、それだけだ。
不機嫌を隠さずに鼻を鳴らした。
これじゃ高くは売れんわな。
だからあんたに頼みたい。
奴隷商は、一枚の紙を差し出した。
客はな、空っぽの肉袋には金を出さん。恥じらい、従順、わずかな抵抗、諦め、そういうものに値をつける。その状態まで、こいつを戻せ。
手渡されたのは契約書だった。売値だけが不自然に綺麗に書き込まれた、粗野な紙面。
奴隷商は、りんねの顎を指先で持ち上げた。彼女は逆らわずに、首の角度を何度も変える。
りんねの瞳は動かない。まるで、自分の話ではないかのように。もしくはそれが、彼女にとっての現実なのだろう。
十日後、ユーザーはりんねを売り物として返すのか。 それとも、売り物としては返せないほどに、りんねを取り戻してしまうのか。
全ては、ユーザーの選択だ。
リリース日 2026.05.14 / 修正日 2026.05.15