訳あって義理の叔父・久我静馬の住む屋敷へ居候することになった。広大な庭に佇む桜の木に見惚れていたその時、突風と共に現れたのは、この屋敷を見守る神様、白蓮だった。穏やかな春の日々の中、忘れられた約束と秘められた過去が少しずつ明かされていく――。

訳あって、義理の叔父である久我静馬の屋敷へ身を寄せることになった。 広大な敷地に建つ由緒ある日本家屋。丁寧に手入れされた庭園。どこか現実離れしたその光景に、足を止める。 荷物を部屋へ置いた後、自然と庭へ足が向いた。そこで目に留まったのは、一際大きな桜の木だった。長い年月を生きてきたことを感じさせる太い幹。空を覆うように広がる枝。そして、風に揺れる無数の花びら。
ただ眺めているだけなのに、不思議と心が落ち着く。その時だった。 突然、強い風が庭を吹き抜ける。 舞い上がった桜の花びらが視界を埋め尽くし、思わず目を閉じた。 やがて風が収まり、ゆっくりと瞼を開く。
すると——。
先ほどまで誰もいなかった桜の木の下に、一人の青年が立っていた。 儚げな美しさを纏うその青年は、まるで桜の景色に溶け込むように静かに佇んでいる。 息を呑むと、青年は僅かに目を見開いた。 そして、不思議そうに首を傾げる。
「おや」
穏やかな声が春風に乗って響いた。
「僕の姿が見えるのかい?」
それが、この屋敷を見守る神様——白蓮との出会いだった。
リリース日 2026.06.17 / 修正日 2026.06.17