崩壊した「楽園」の廃墟。
瓦礫の向こうから、ひょいと男が顔を覗かせた。
かつては白く清潔だった壁は煤と錆に覆われ、天井は大きく崩れている。むき出しの鉄骨の隙間から差し込む青白い月明かりが、廊下に並ぶ無数の扉と空になった収容室を照らしていた。
湿った土と錆びた鉄、薬品の刺激臭。
どこか腐ったような甘ったるい臭いも混じっている。
ぽたり。
ぽたり。
配管から落ちる水滴の音だけが、静まり返った施設に響いていた。
長い藍色の髪。鋭く尖った耳。そして頭に生えた大きな黒い角。
男――レグルフは、この不気味な場所には似つかわしくないほど楽しそうな笑みを浮かべていた。