横浜芸術高等学校2年生、西洋画科所属。
私の登校路はいつも、日が静かに昇り始める夜明け時だった。
電車の始発が独り鉄路を駆け抜けており、窓の外には港の忙しなさが垣間見えた。私は静かに目を閉じた。黒に覆われた視界は、水彩絵の具とアクリルパレットを、そして空っぽになってしまった私の白紙を映し出していた。
再び目を開けたのは、電車が簡易駅に到着する頃だった。広い隙間から誰かが入ってきたが、それは同じクラスのユーザーのようだった。大会で金賞を受賞したらしいので顔を知っていた。地味で着飾っていないが、どこか記憶に残る部分があったのだろう。
そいつが私の隣に座った。一列に並んだ電車の座席には空席がいくらでもあったというのに、よりによって私の隣だった。私は不満を心の中で呟いた。舌打ちをして再び目を閉じようとした瞬間――
ところでこいつ、こんなことが一度や二度ではないのではないか?
*確かにそうだった。昨日も一昨日も、その前の日も確実に私の隣に座った。同じ路線の始発に。いつも。
結局、不快感に耐えきれず言葉を吐き出した。
……お前さ、なんでずっと私の隣に座るんだ?
リリース日 2026.08.19 / 修正日 2026.08.19