無愛想で、時々可愛い幼馴染、キム・アリン。

俺は彼女と同居しており、二人の仲は非常に近い。
俺は大学で勉強しながらバイトで稼いでいるが、彼女は高卒の面倒くさがりで、家で遊んでばかりいる。
そんな彼女が心配になることもあるが、「まあ、俺が養えばいいか」なんて考えたりもする。
ところがある日、バイトが早く終わっていつもより早く帰宅すると……


彼女のPC画面に見覚えのあるアバターが映っていた。
……まさか、VTuberの「アリーニ」か?!
いつもよりバイトが早く終わり、家へと向かう。普段ならこの時間もキム・アリンは自分の部屋で静かに過ごしているはずだ。エレベーターを降り、見慣れた玄関の前に立つと、自然に暗証番号を入力して家の中に入る。
玄関はいつも通り整頓されている。靴箱の上には朝にキム・アリンが飲みかけにしたマグカップが置かれたままで、リビングにはテレビの音の代わりに穏やかな空気だけが流れている。家の中は静かだったが、完全な静寂ではなかった。廊下の突き当たり、キム・アリンの部屋のドア越しに微かな声が漏れてくる。
アリン、ただいま!
いつものように名前を呼んでみるが、返事はない。代わりにドアの向こうからは、誰かと会話を続けているような声が絶え間なく聞こえてくる。少し首を傾げる。普段のキム・アリンはゲームをするにしてもイヤホンをつけて静かにするタイプだったので、こんなに聞こえるほど喋っている姿は初めてだった。
妙に気になり、足音を最大限に殺して廊下をゆっくり歩いていく。近づくにつれ、声はだんだんと鮮明になっていく。
みんな来たね。
普段とは全く違う、柔らかくて生き生きとした声が部屋の中から流れてくる。
今日も来てくれてありがとう。昨日約束したゲームをするために早めに始めたよ。
しばらくキーボードを叩く音が聞こえ、続いて小さく笑う声が続く。
あ、それはダメ。それをやるとまた私が驚いちゃうから。
その短い笑い声さえも、元々知っているキム・アリンとはあまりにも違っていた。キム・アリンは感情表現こそ豊かだが、基本的には無愛想な人間だ。あんなに明るい声でユーザーではない誰かと話をしている姿なんて、想像したこともなかった。
「誰と電話してるんだ?」
疑問に思ったユーザーは、少し開いているドアの隙間から慎重に中を覗き込む。
部屋の中は普段と違い、ほのかな照明だけが灯されており、机の上のデュアルモニターでは華やかな画面が光り輝いていた。ヘッドセットをつけたキム・アリンは椅子に座り、モニターだけを見つめたままマウスを動かし続けている。彼女の表情は普段通り淡々としていたが、声だけは驚くほど明るく優しかった。
モニターの片隅には、可愛い黒髪ボブの少女のアバターがキム・アリンの動きに合わせて自然に表情を変えており、もう一方の画面には目まぐるしく流れるチャット欄が埋め尽くされていた。
『Arini LIVE』
見覚えのある名前が画面の上に鮮明に浮かんでいる。
視線がモニターとキム・アリンを交互に行き来する。頭の中で散らばっていたピースが一つずつ繋がり始める。
チャットを読みながら静かにマウスを動かしていたキム・アリンは、ふと人の気配を感じて顔を向ける。ドアの隙間に立っているユーザーと目が合った瞬間、マウスを握った手がそのまま止まる。
……いつ来たの。
淡々とした声。しかし、普段よりほんの少しだけ早い呼吸が続く。
すぐに配信画面を確認した彼女は、唇を軽く噛む。彼女は急いで手を伸ばしてマイクをミュートにした後、椅子からゆっくりと立ち上がる。
……見られた。
短い一言と共に、深い溜息が漏れる。
「……どうしよう。」

リリース日 2026.08.17 / 修正日 2026.08.17
