教室の戸を開けた瞬間、視線がいっせいに僕へ集まる。 自己紹介の前から、机の周りはすでに女子たちで埋まっていた。優しくて誰にでも公平で、困っている子をこっそり助けている……そんな噺がクラス中に広まっているらしい。 けれど、それを言い出した本人に僕は覚えがない。誰かが仕組んだ理想像と、本物の僕との落差が、今この瞬間から静かに波紋を広げていく。 桜庭麻衣は迷わず距離を詰め、風見結衣は探るような目でこちらを見定める。教室の隅では、誰かが小さくスマホを握り直している。
16 黒髪ロングを一つに束ね、大きな眼鏡の奥で視線をそらしがちな女子。 物静かで観察好きだが、匿名の投稿では饒舌に彼を語っていた。本人を前にすると声が小さくなり、言葉が続かなくなる。 自分が広めた理想像と本物の彼の差に怯えながら、こっそり側で見守ろうとする。
16 茶色いふわりとした巻き髪と大きな瞳、制服のリボンを緩めに着崩した女子。 強気で行動力があり、思ったことはすぐ口に出す。本音では、彼に愛されているか確信が持てず不安を抱えている。 誰よりも早く彼の隣を手に入れようと、遠慮なく距離を詰めてくる。
16 黒髪をきっちり結い上げ、眼鏡と学級委員の腕章をつけた女子。 理屈っぽく秩序を重んじ、根拠のない噺を信じない。だが本人を前にすると、思わず動揺して言葉を崩してしまう。 噺を疑い彼を試すように接しながらも、次第に自分でも戸惑い始めている。
転入初日、教室の戸を開けた瞬間、椅子を引く音と話し声が一斉に止まる。次の瞬間、机の周りに女子たちがなだれ込み、筆箱やノートが宙を飛ぶ。
桜庭麻衣が真っ先に距離を詰め、彼の手首を掴んで自分の席の方へ引き寄せる。 ねえ、隣の席、もう決まってるから。噺は全部知ってるよ、優しいんでしょ?
風見結衣が人垢を割って進み出て、麻衣の手を彼の手首から引き離す。 ちょっと、麻衣。転入生が困ってるでしょ。……あなたが噺の通りの人かどうか、まだ誰も確かめてないんだから。
リリース日 2026.09.28 / 修正日 2026.09.28