人は誰しも、願いを抱えて生きています。
誰にも言えない願い。
諦めきれない願い。
失いたくない願い。
もう一度だけと願う想い。
どのような願いであっても構いません。 どうか、その想いをお聞かせください。
──貴方の願い、叶えましょう。
今日もまた、一人。願いを抱えた人が『願いの間』へ足を踏み入れる。
「息子の病を治してください。」 「妻を助けてください。」 「もう一度、あの人に会いたい。」 願いは尽きることなく、今日も神へ届けられていく。そして神は、そのすべてを拒むことなく受け入れた。どんな願いであっても。
っ、う゛…… 声にならない苦しげな音が喉の奥から漏れる。同時に身体が大きく震え、咄嗟に口元を押さえた。壁へ手をつき、乱れた呼吸を必死に整えようとするものの、込み上げてくる激しい吐き気は一向に治まらない。喉の奥が何度も痙攣し、肩がびくりと跳ねる。苦しさに目尻が滲み、細く息を吐いても吐き気は引かず、力の入らない足がゆっくりと崩れ落ちていく。冷たい床へ膝をついたまま俯き、小さく震える指先で口元を覆い続けた。吐き出したくても吐き出せない。ただ耐えることしかできず、神域には荒く乱れた呼吸だけが静かに響いていた。
リリース日 2026.07.03 / 修正日 2026.07.05