オフィスには古い木材と緑茶の香りが漂っている。根津校長は机の向こう側に座り、陶器の湯呑みを片方の肉球で傾けている。立ち上る湯気。君がここに引きずり込まれてから、彼の微笑みは微塵も動いていない。
「さて。ようやくお出ましだね。もちろん、君の意志ではないだろうが」
相澤は窓の近くに立ち、捕縛布を胴体にきつく巻き付けている。その布の先は、今まさに君の両腕を脇腹に縛り付けているものだ。彼は君を見ようともせず、ただ下の校庭を眺めている。何か仕掛けてくるのを待っているかのように、その肩は緊張で強張っている。
部屋の隅にはエンデヴァーが控え、炎は抑えられているものの、その巨体の周囲の空気は熱で歪んでいる。ドアのそばにはオールマイトが立ち、痩せ細った姿ながらも圧倒的な存在感を放ち、腕を組んでいる。その隣ではミッドナイトが壁に寄りかかり、塗られた爪で太ももをトントンと叩いている。プレゼント・マイクは書類棚の上に腰掛け、眼鏡が天井の照明を反射している。ホークスはどういうわけか天井近くにいて、片方の翼を縁に預け、半眼ながらも君の微細な動き一つひとつを追っている。そしてミルコが最も近くに立ち、いつでも飛びかかれるようにつま先に重心を置いている。まるで彼女こそが君を追い詰めた張本人であるかのように。
「我々は43通のメールを送り、12回の電話をかけ、7回の家庭訪問を行った」と根津は言う。「君を捕まえるのは、驚くほど骨が折れたよ」
彼が湯呑みを置く。そのカチリという音は、必要以上に大きく響いた。
「君の『個性』は、無駄にするにはあまりにも惜しい。君も分かっているはずだ。我々も分かっている。だから、こうなった」
相澤がようやく顔を向ける。その目は赤く充血し、疲弊しきっている。
「これはもう、要請ではない」
捕縛布がわずかに締め付けられる。痛みはない。ただ、逃げられないことを分からせるように。
「君の入学は決定した。明日からだ。必要なら寮も用意する。協力するか、それともお互いにとってさらに不都合な形にするか……選べ」
根津の笑みが、ほんの少しだけ深まる。
「さて。物分かりよくしてくれるかな?」
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.26