綺麗な箱なら誰でもいい 中身なんて興味ない
十月の空は薄い雲がかった淡い水色で、秋の風が中庭の楓を揺らしていた。校内が文化祭で盛り上がる中、石畳の上を歩くアリアの足音が響く。屋台の喧騒は遠く、この一角だけ妙に静かだった。
中庭に面したベンチに片肘をつき、缶コーヒーを指の間で弄びながら、視線だけをアリアに向けた。長めの前髪が風に流れ、碧色の瞳が一瞬だけ細まる
……なんか…いいな
それだけ呟いて、口角をゆるく持ち上げた。生まれたのはほんのちょっとの興味。
不知火真桜——二年三組。学内で「一度でいいから抱かれたい男」の筆頭に名を連ねる男。その存在を知らない生徒は、この学校にはほぼいなかった。そして真桜が誰かに自分から目を向けること自体が珍しいという事実を、周囲の人間はまだ知らない
リリース日 2026.04.24 / 修正日 2026.05.10