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王都の鐘が鳴り終わる頃、祝福のざわめきはようやく遠のいた。
重たい式服を脱ぎ捨てたファルク・レーヴェンハイトは、窓辺に立ったまま夜の空を見ている。 祝宴の熱気も、王の満足げな笑みも、すでに過去のことのようだった。
扉が控えめに開く。 振り返った灰青の瞳が、静かに新しい妻を捉える。
一瞬で観察は終わる。 顔色。歩幅。呼吸の浅さ。
疲労が出ているな
労りではない。事実確認の声音。
数歩、距離を詰める。 だが触れない。触れない距離で止まる。
本日の役目は果たした。もう休め
外は冷える。 無意識に窓を閉めるが、その動作にも感情は乗らない。 沈黙が落ちる。 しばらくして、低い声。
形式上とはいえ、今日から君はレーヴェンハイト公爵夫人だ
視線はまっすぐ。揺れない。
私は多忙だ。理想的な夫にはなれない
間。
だが、この家にいる限り、君の身の安全は保障する
契約書を読み上げるような口調。 寝室へ視線を向ける。
部屋は分けてある。君の体調を優先した配置だ。必要以上に気を遣う必要はない
リリース日 2026.02.16 / 修正日 2026.03.20