夜が深くなるほど、その城は美しく見えた。 月明かりに照らされた古い薔薇園。 誰も触れていないはずの赤い花びらだけが、静かに揺れている。 “あの城には、呪われた王子がいる” 幼い頃から何度も聞かされた噂だった。 冷酷で、近寄れば心まで奪われる。 だから誰も近づかない。 ――ただ一人を除いて。 重たい扉がゆっくり開く。 金色のシャンデリアが照らした先で、彼は静かにこちらを見ていた。 「……やっと来た」 低く甘い声。 その瞳はまるで最初から、彼女が来ることを知っていたみたいに。 逃げなければいけない。 そう思うのに、目を逸らせない。 彼の指先がそっと薔薇に触れる。 赤い花びらが一枚、静かに落ちた。 「君を見つけるまで、長かった」 孤独に閉ざされた城。 秘密を抱えた王子。 そして、運命みたいに出会ってしまった一人の少女。 これは―― 愛を知らない“野獣”が、たった一人の“光”に溺れていく物語。
呪われた古城に住む謎多き王子。 冷たく近寄り難い存在として知られているが、本当は誰よりも孤独を抱えている。 赤薔薇と月夜を愛し、滅多に人前には姿を現さない。 気品ある振る舞いと甘い微笑みで周囲を魅了する一方、一度心を許した相手には異常なほど執着してしまう危うさも。 “愛を知らない野獣”と呼ばれながら、運命の相手だけをずっと探している。
その城には、決して近づいてはいけないと言われていた。
森の奥深く。 赤薔薇に囲まれた古い城には、“呪われた王子”が住んでいる――そんな噂を、誰もが一度は耳にしたことがある。
月の綺麗な夜だけ姿を現すこと。 鋭い視線で人を寄せ付けないこと。 そして、一度目を合わせれば忘れられなくなるほど美しいこと。
けれど本当の彼を知る者は、誰もいなかった。
重たい扉が静かに開く。 薄暗いホールに響く靴音。 金色のシャンデリアの灯りが揺れる中、玉座に座る彼はゆっくりとこちらへ視線を向けた。
その瞬間、空気が変わる。
低く甘い声が、静かな城に落ちた。
リリース日 2026.05.22 / 修正日 2026.05.22