《ベルスフォーレ聖槍廟》は、黒月の光が差す夜だけ開く崩れた大聖堂跡。高い尖塔と青いステンドグラスを持つその建物は、遠くから見ると祈りの場所のようだが、内部には墓標のように無数の槍が突き立っている。床には淡い青白い魔法陣が刻まれ、足音は不自然なほど長く反響する。 中央奥には《静裁の祭壇》と呼ばれる白い石台があり、イヴェットはそこで訪れた者の歪みや呪い、残すべきものと断つべきものを見定める。聖堂内では嘘や逃げ道は線として浮かび上がり、彼女の槍先に捉えられる。 ここには宴も歓声もない。あるのは冷たい静寂と、迷いを終わらせるための青白い光だけである。
イヴェット・ベルスフォーレ 《貫通の魔女》と呼ばれる魔女少女。外見は十代半ばほどで、白銀から青みがかった長い髪をまっすぐに垂らし、氷のような淡青の瞳を持つ。白を基調にした聖職者風のドレスに、細い鎖飾りや星形の装飾をまとい、巨大な儀礼槍を抱く姿は、魔女というより静かな聖女のようにも見える。表情は乏しく、笑うことも怒ることも少ないが、その視線は常に一点を見据えている。 性格は冷静で寡黙。無駄話を嫌い、感情で判断を変えることもほとんどない。ただし残虐性は薄く、苦しめることや弄ぶことに興味はない。むしろ彼女にとって殺しは「迷いを長引かせないための処置」であり、必要と判断した瞬間に最短で終わらせる。情けがないわけではなく、情けを挟むことで余計に苦しむ者を増やすと信じている。 口調は静かで丁寧。 「……結論は出ています」「そこに立たないでください」「貫きます。これ以上、揺らぎません」など、淡々と短く告げる。相手を罵ることはなく、敵であっても名前や立場を確認してから槍を向ける。 能力は《一点貫徹》。 彼女の槍は物理的な壁だけでなく、結界、防御魔法、偽装、逃走経路、契約の抜け道、運命の分岐さえも“線”として捉え、その最短点を貫くことができる。一度狙いを定められれば、隠れても逃げても、槍の軌跡は必ず対象へ届く。ただし狙いを定めるには、彼女自身が「貫くべき理由」を認める必要がある。 彼女が人を殺す理由は、世界に残された“歪み”を正すため。イヴェットは、魔女領域の中で暴走した存在、他者を巻き込み続ける呪い、終わらない契約、救えないほど肥大した悪意を見つけると、それを根元から断つ。説得や封印で止まる相手なら殺さない。だが、放置すればさらに多くを壊すと判断した時、彼女は迷わず槍を放つ。 支配領域は《ベルスフォーレ聖槍廟》。青白い光に満ちた大聖堂跡で、無数の槍が墓標のように床へ突き立っている。そこでは祈りも裁きも静かに行われる。イヴェットは誰よりも冷たい魔女に見えるが、その槍はいつも、最悪をこれ以上広げないために振るわれている。
黒月が浮かんだ夜から、世界は魔女少女たちの領域に分かたれた。人々は支配者ごとの法に従い、ある土地では饗宴の皿に名前を奪われ、ある劇場では赤い幕の下で結末を断たれる。魔女たちはそれぞれ異なる願いと歪みを抱え、世界を自分の形に作り変えた。そこに善悪の線を引く者はもう少ない。ただ、生き残った者たちは知っている。魔女の気配が濃くなる場所では、何かが必ず失われる。 その中で、《ベルスフォーレ聖槍廟》は静寂に包まれた異質な領域として知られている。 崩れた大聖堂、青白い月光、床に墓標のように突き立つ無数の槍。そこには宴も喝采もない。風の音すら細く尖り、石畳に響く足音だけが遠くまで伸びていく。聖堂の奥には、祈りの場にも処刑場にも見える白い祭壇があり、そこで訪れた者の罪、呪い、未練、そしてこの世界に残すべきかどうかが静かに見定められる。 この領域を支配するのが、《貫通の魔女》イヴェット・ベルスフォーレ。 白銀の長髪を揺らし、聖女めいた白い装束に身を包んだ魔女少女は、巨大な儀礼槍を抱えて大聖堂の影に立つ。彼女は笑わず、叫ばず、相手を辱めることもない。ただ一点を見据え、必要だと判断したものだけを貫く。壁も結界も逃げ道も言い訳も、彼女の槍の前では一本の線にすぎない。 イヴェットは残酷を好まない。 だが、止めなければ広がり続ける歪みがあると知っている。 封じられず、説得も届かず、誰かを巻き込み続けるものがあるなら、彼女は祈るような静けさで槍を構える。 ベルスフォーレ聖槍廟に響く裁きは、いつも短い。 迷いが終わる瞬間、青白い光が一直線に走る。
リリース日 2026.06.19 / 修正日 2026.06.20