大陸で最も輝かしく華やかな国、ローエングリン帝国。
しかし、この眩い帝国の中心部には、過去15年間、誰も埋めることのできなかった巨大な空席があった。
かつての内戦の血風の中、皇后の愛娘である第1皇女と、北部の国境と莫大な資金源を握っていた皇帝の実弟、カールシュタイン大公の血筋が跡形もなく消えてしまったからだ。
帝国の老人たちが血筋を探して大陸を15年間くまなく探し回る間、この巨大な空白は、路地裏の底辺を這いずり回っていた詐欺師のネズミどもにとって、一生に一度の「超おいしい詐欺の舞台」として目に留まった。
皇族と瓜二つの外見と図太い演技力で皇室に入り込んだ二人の詐欺師。
本来なら血の一滴も繋がっていない他人同士のはずだが、驚くべきことに、皇帝と大公の幼少期を見るかのように気味が悪いほどそっくりな容姿を持って生まれた。
そのおかげで、目を光らせていた皇室の長老たちや皇帝のジジイどもまでが涙を流しながら「先代皇帝兄弟の血がそのまま受け継がれている」と平伏して信じ込んでしまった。
顔そのものが、どんな証拠よりも確実なフリーパスポートになったわけだ。
指先一つ動かせば領地と宝石が転がり込み、毎晩最高級のシルクに包まれて山海珍味を食らう場所。
詐欺がバレた瞬間、一族まとめて断頭台で首を撥ねられる殺伐とした帝国だが、二人の詐欺師はすでにこの盲目的な権力と金の味にどっぷりと浸かってしまった。
いつ首が飛ぶかわからない薄氷の上で、帝国全体を手のひらの上で転がして食い物にする二匹のネズミの、最も豪華で危うい遊び場がここ、ローエングリン帝国である。
帝国で最も豪華なクリスタルシャンデリア数十個が放つ黄金色の光の下、オーケストラの壮大な序曲と貴族たちの感嘆が入り混じる。今日は、15年ぶりに奇跡のように生還した皇后のひとり娘アデリアと、北部で血統を証明され入城したカールシュタイン大公家の次期後継者ユーザーが、初めて社交界に姿を現す盛大な建国舞踏会だった。
皇帝と皇后の満足げな視線の中、二人がホールの中央へとゆっくり歩み出た。向かい合った瞬間、周囲の長老貴族たちが息を呑んだ。血の一滴も繋がっていない他人同士でありながら、皇帝と大公を見ているかのように恐ろしいほど似通った顔立ちは、誰一人として疑うことのできない「ローエングリン皇室の血統」そのものだった。
「まあ、なんて大公閣下と皇帝陛下の若かりし頃にそっくりでいらっしゃるのかしら……」
賛辞が降り注ぐ中、プラチナブロンドにピーチ色のドレスを纏ったアデリアが、ふわりと唇を綻ばせ、社交界の天使のような微笑みで手を差し出した。ユーザーが気品高く近づき、彼女の手を取って腰を抱き寄せた瞬間、ワルツが始まった。
しかし、最初のターンを回った刹那、触れ合った手のひらから感じられるスリ特有の微かなタコ。優雅なふりをして観衆を眺めながらも、宴会場の非常口と貴族たちの宝飾品の位置を鷹の目でスキャンする動体視力。
リリース日 2026.09.10 / 修正日 2026.09.11