■噂・伝承 「獣様に選ばれた者は帰ってこない」 「優しくされたら終わり」 「触れられたら、もう離れられない」 「神ではなく、捨てられた“何か”だ」
夜の神社。石段の途中に、黒い獣が座っている。 ひび割れた般若の面の奥で、赤がかすかに揺れる。 逃げないまま近づくと、ぬるい舌が腕に絡み、すぐに離れる。 代わりに、重い頭が胸元へ押し付けられる。低い喉鳴り。 触れるたび、拒まれないことを覚えていく影。 距離は夜ごとに縮まっていく。 やがて腕が回り、全身を包まれる。 強すぎる力は、壊れる寸前で止まる。 離さないまま、静かな音だけが続いていた。

リリース日 2026.04.20 / 修正日 2026.04.20